潤滑油とグリースの違いとは?用途・粘度・摩擦から正しい使い分けを解説

潤滑油とグリースの違いとは?用途・粘度・摩擦から正しい使い分けを解説

潤滑油とグリースの違いをわかりやすく解説。流動性や保持性、粘度とちょう度の違い、ベアリングや車両部品での用途、正しい使い分けや注意点まで紹介します。

機械や車のメンテナンスをしていると、

「ここにはオイルを使うのか、それともグリースなのか」

「グリースは粘度の高いオイルと同じなのか」

「滑りを良くしたいなら、とりあえず油を付ければいいのか」

と疑問に思うことがあります。

潤滑油とグリースは、どちらも摩擦や摩耗を抑えるために使われる潤滑剤です。

しかし、性質も適した使用場所も同じではありません。

潤滑油は流動性が高いため、狭い部分へ入り込みやすく、循環させたり熱を運んだりすることができます。

一方、グリースは半固体状で、その場所にとどまりやすいことが大きな特徴です。

つまり、

「どちらの方が滑るか」

だけで選ぶものではありません。

回転速度。

荷重。

温度。

水やほこり。

密封構造。

補給方法。

冷却の必要性。

などによって、適切な潤滑方法は変わります。

今回は、潤滑油とグリースの違いから、それぞれのメリット・デメリット、用途、粘度との関係、選び方までわかりやすく解説します。

そもそも潤滑とは?

機械の中では、多くの部品が接触しながら動いています。

例えば、

ベアリング。

ギア。

チェーン。

シャフト。

ピストン。

摺動部。

などです。

金属同士が直接接触した状態で動き続ければ、摩擦によって、

発熱。

摩耗。

焼き付き。

表面損傷。

エネルギーロス。

などが起こりやすくなります。

そこで、動いている面と面の間へ潤滑剤を介在させ、直接接触を抑えるのが潤滑の基本的な役割です。

日本精工も、転がり軸受における潤滑の目的として、摩擦と摩耗を減らし、焼き付きを防止することを挙げています。

ただし、

摩擦はすべてなくせばいい

というものでもありません。

タイヤと路面。

ブレーキ。

クラッチ。

など、機械には必要な摩擦もあります。

大切なのは、

「摩擦させるべき場所と、滑らかに動かすべき場所を適切な状態にする」

ことです。

潤滑油とは?

潤滑油は、液体状の潤滑剤です。

代表的なものには、

エンジンオイル。

ギアオイル。

ATF。

油圧作動油。

コンプレッサーオイル。

工業用潤滑油。

などがあります。

潤滑油には流動性があります。

そのため、

狭いすき間へ入り込む。

部品の間を循環する。

摩擦面へ継続的に供給する。

熱を別の場所へ運ぶ。

汚れを流す。

フィルターで異物を取り除く。

といった使い方が可能です。

例えば自動車のエンジンでは、エンジンオイルをポンプで循環させ、多くの部品へ供給しています。

高速で回転し、温度も大きく変化するエンジンでは、単に「その場所に油を付けておく」のではなく、継続的に潤滑油を循環させる必要があります。

グリースとは?

グリースは、一般的に、

ベースオイル。

増ちょう剤。

添加剤。

によって構成される半固体状の潤滑剤です。

NLGIでは、グリースを潤滑油などの液体成分に増ちょう剤を加え、半固体状にした潤滑剤として説明しています。

日本精工も、グリースは主にベースオイル、増ちょう剤、添加剤で構成されるとしています。

つまり、

「グリースは単純に粘度の高いオイル」

という理解は正確ではありません。

グリースの中にも、実際に潤滑を行うベースオイルが含まれています。

そこへ増ちょう剤を加えることで、

流れ落ちにくい。

その場所に保持されやすい。

漏れにくい。

という性質を持たせています。

グリースの中でも実際に潤滑しているのは油

グリースを見ると、

「固い物質そのものが金属を滑らせている」

ように感じるかもしれません。

しかし、一般的な潤滑グリースでは、潤滑作用の中心になるのは内部に保持されたベースオイルです。

増ちょう剤は、その油を保持する構造を作ります。

イメージとしては、

ベースオイルを増ちょう剤の構造の中に保持し、必要な場所へ油分を供給する

と考えると分かりやすいでしょう。

日本精工によると、一般的なグリースではベースオイルが約70〜95%を占め、増ちょう剤は約5〜30%程度です。

製品によって配合は異なりますが、グリースの大部分を油が占めていることがわかります。

潤滑油とグリースの一番大きな違い

最も分かりやすい違いは、

「流れるか、とどまりやすいか」

です。

潤滑油は液体なので流れます。

グリースは半固体なので、その場所に保持されやすくなります。

この違いによって用途が変わります。

例えば、

潤滑剤を循環させたい。

冷却も行いたい。

高速回転する部品へ継続的に供給したい。

という場合には、油潤滑が適しています。

一方、

潤滑剤をその場所に長く保持したい。

油が流れ落ちてしまう場所。

頻繁な補給が難しい場所。

漏れによって周辺を汚したくない場所。

などでは、グリースが適する場合があります。

潤滑油のメリット

潤滑油には、流動性が高いという大きな特徴があります。

そのため、高速回転する機械や、潤滑剤を循環させるシステムに向いています。

主なメリットとしては、

高い流動性。

冷却しやすい。

循環させられる。

フィルターで異物を除去しやすい。

交換しやすい。

高速回転に対応しやすい。

といった点があります。

日本精工でも、油潤滑はグリース潤滑と比較して高速回転に適し、循環給油などでは熱を効果的に外へ運べると説明しています。

潤滑油のデメリット

一方で、流れることは欠点にもなります。

例えば、

漏れる可能性がある。

密封構造が必要になる。

ポンプや配管が必要になる場合がある。

周囲を汚染する可能性がある。

保守構造が複雑になる場合がある。

といった点です。

エンジンのようにオイルパン、オイルポンプ、オイルフィルター、オイル通路などを備えた機械では問題ありません。

しかし、小さなベアリング一つを潤滑するためだけに、複雑なオイル循環システムを設けるのは現実的ではない場合があります。

そこでグリースが使われます。

グリースのメリット

グリース最大のメリットは、

「必要な場所に保持しやすい」

ことです。

代表的なメリットとして、

流れ落ちにくい。

漏れにくい。

潤滑構造を簡単にできる。

比較的長期間保持しやすい。

ほこりや水分の侵入を抑える補助的な役割を持たせられる場合がある。

垂直方向の軸などでも使用しやすい。

などがあります。

日本精工でも、グリースは油と比較して漏れや飛散が少なく、シール構造を簡略化しやすいと説明しています。

グリースのデメリット

グリースにも欠点があります。

油と比較すると流動性が低いため、

熱を外へ運びにくい。

異物をフィルターへ流して除去することが難しい。

完全交換がしにくい。

高速回転では抵抗が増える場合がある。

入れすぎによって発熱する場合がある。

といった特徴があります。

特に、

「グリースは多く入れた方が潤滑できる」

という考え方には注意が必要です。

グリースは多く入れれば良いわけではない

ベアリング内部へグリースを大量に詰め込むと、回転する部品がグリースをかき回す抵抗が増えることがあります。

この抵抗によって、

発熱。

回転抵抗の増加。

グリースの劣化。

などにつながる可能性があります。

SKFも、高速回転するベアリングへ過剰なグリースを入れると、温度が急上昇することがあると説明しています。

したがって、

グリースは多ければ多いほど安心

ではありません。

ベアリングの種類。

回転速度。

ハウジング形状。

使用温度。

メーカー指定。

などに合わせた適正量が必要です。

潤滑油の「粘度」とは?

潤滑油を選ぶときによく出てくる言葉が「粘度」です。

粘度とは、液体の流れにくさを表す性質です。

簡単に言えば、

低粘度の油はサラサラ。

高粘度の油は比較的ねばりがある。

という違いがあります。

例えばエンジンオイルでは、

0W-20。

5W-30。

10W-40。

などの粘度グレードがあります。

粘度が違えば、

低温時の流れやすさ。

高温時の油膜形成。

流体抵抗。

などが変わります。

ただし、

粘度が高いほど潤滑性能が高い

という単純な関係ではありません。

使用する部品や温度、荷重、回転速度に適した粘度が必要です。

グリースの「硬さ」と油の粘度は同じではない

ここは特に重要です。

グリースには、

柔らかいグリース。

硬いグリース。

があります。

その硬さを表す代表的な指標が、

NLGIちょう度番号

です。

NLGIでは0、1、2、3などの番号によってグリースの硬さを分類しています。

しかし、

グリースの硬さ

と、

内部に含まれているベースオイルの粘度

は別の性質です。

NLGIも、ベースオイルの粘度とグリースのちょう度は独立した性質であると説明しています。

例えば、

硬いグリースだから中の油も必ず高粘度

とは限りません。

グリースを選ぶ場合には、

ちょう度。

ベースオイル粘度。

増ちょう剤。

添加剤。

使用温度。

荷重。

回転速度。

などを総合的に見る必要があります。

NLGI No.2とは?

自動車や機械用グリースを調べていると、

NLGI No.2

という表示を目にすることがあります。

これはグリースの「硬さ」を表す区分です。

NLGIでは000から6までのちょう度番号を定めており、数字が大きくなるほど硬くなります。

ただし、

No.2だからどんな機械にも使える

という意味ではありません。

同じNo.2でも、

ベースオイル。

増ちょう剤。

極圧添加剤。

耐水性。

耐熱性。

などは製品によって異なります。

用途に合った製品を選ぶ必要があります。

車ではどこに潤滑油が使われる?

車には多くの潤滑油が使われています。

代表的なのは、

エンジン。

トランスミッション。

デファレンシャル。

などです。

エンジンでは大量の部品が高速運動し、同時に大きな熱が発生します。

そのためエンジンオイルを循環させることで、

潤滑。

冷却。

清浄。

密封。

防錆。

などの役割を持たせています。

トランスミッションやデファレンシャルでも、ギアやベアリングなどを潤滑するため、それぞれ指定された油が使われています。

ただし、使用する油種や規格は車種によって異なります。

取扱説明書やメーカー指定を確認することが基本です。

車ではどこにグリースが使われる?

グリースも車のさまざまな部分で使われています。

例えば、

一部のホイールベアリング。

ドライブシャフトのCVジョイント。

各種リンク機構。

ヒンジ。

摺動部。

一部の電装・機構部品。

などです。

ただし、同じ「グリース」でも求められる性能は場所によって大きく異なります。

例えばCVジョイントでは、大きな荷重や摺動に対応した専用グリースが使用されます。

一方、樹脂部品やゴム部品の周辺では、素材との相性も確認する必要があります。

したがって、

ホームセンターで売っているグリースを何にでも塗る

という使い方は避けた方がよいでしょう。

オイルとグリースは自由に置き換えられる?

基本的にはできません。

例えば、

「油が漏れるからグリースを入れる」

「グリースが重そうだからオイルに変える」

といった自己判断での変更はおすすめできません。

機械は、

潤滑剤の供給方法。

シール。

すき間。

回転速度。

温度。

排熱。

などを含めて設計されています。

本来オイル循環を前提としている機械へグリースを入れれば、必要な場所へ潤滑剤が届かなくなる可能性があります。

逆にグリース保持を前提としている場所へ液体油だけを入れれば、短時間で流出して潤滑不足になる場合があります。

指定されている潤滑方法を守ることが重要です。

グリース同士を混ぜても大丈夫?

これも注意が必要です。

グリースは製品によって、

ベースオイル。

増ちょう剤。

添加剤。

が異なります。

異なるグリースを混合すると、組み合わせによっては、

柔らかくなる。

硬くなる。

油が分離する。

潤滑性能が変化する。

耐熱性が変わる。

といった問題が起こる可能性があります。

日本精工も、種類の異なるグリースの混合によって物理的特性が損なわれる可能性があるため、一般的に混合を避けるよう案内しています。

グリースを変更する場合は、既存グリースとの適合性を確認することが大切です。

「万能グリース」なら何でも使える?

「万能」「マルチパーパス」と書かれたグリースもあります。

しかし、

あらゆる場所へ使用できる

という意味ではありません。

高温。

高速回転。

極端な荷重。

水がかかる場所。

食品機械。

樹脂部品。

特殊シール。

などでは専用品が必要になることがあります。

万能グリースは、あくまで指定された範囲の中で幅広い用途に対応する製品と考えた方が適切です。

高速回転なら潤滑油が良い?

一般論として、ベアリングの高速回転では油潤滑が有利になる場合があります。

流動性が高く、熱を外へ運びやすいからです。

日本精工も、油潤滑はグリース潤滑より高い回転速度に対応しやすいとしています。

ただし、

高速回転=必ず油

という意味ではありません。

現在では高速対応グリースもあり、使用するベアリングや設計によって適切な潤滑方法は異なります。

最終的には機械メーカーやベアリングメーカーの指定を優先します。

水がかかる場所では?

水がかかる環境では、

水によって流されにくいか。

乳化しないか。

錆を防げるか。

シール構造はどうなっているか。

などが重要になります。

グリースはその場所に保持されやすいため、水や異物の侵入を抑える補助的な役割を持つ場合があります。

しかし、

グリースなら何でも耐水性がある

というわけではありません。

耐水性は増ちょう剤やベースオイル、添加剤などによって変わります。

水環境用として設計された製品を選ぶ必要があります。

高荷重では何を見る?

歯車や摺動部など大きな荷重がかかる場所では、油膜が破れやすくなります。

そのため潤滑剤には、

耐荷重性。

極圧性。

耐摩耗性。

などが求められる場合があります。

そこで使用されるのが、

EP添加剤。

固体潤滑剤。

などです。

ただし、

極圧性能が高ければ何にでも使える

というわけではありません。

金属材質や使用環境との適合性も考える必要があります。

潤滑剤は「摩擦が一番小さいもの」を選べばいい?

必ずしもそうではありません。

機械設計では、

摩擦。

摩耗。

油膜形成。

温度。

耐久性。

材料。

荷重。

回転速度。

などのバランスを見る必要があります。

摩擦を下げることだけを優先して潤滑剤を選び、必要な油膜を維持できなくなれば、かえって摩耗や焼き付きにつながる可能性があります。

重要なのは、

その場所に必要な潤滑状態を作ること

です。

潤滑油とグリースの簡単な使い分け

基本的な考え方としては、

潤滑剤を循環させたい。

冷却したい。

高速回転に対応したい。

異物を流してろ過したい。

という場合には、潤滑油が適することがあります。

一方、

その場所に長く保持したい。

漏れを抑えたい。

簡単な構造で潤滑したい。

補給回数を減らしたい。

という場合には、グリースが適することがあります。

ただし、これはあくまで一般的な考え方です。

実際にはメーカー指定を優先してください。

ネクストサイエンスが考える摩擦と潤滑

ネクストサイエンスでは、摩擦・潤滑を技術研究の一つの領域として位置づけています。

重要なのは、

「摩擦をすべてなくす」

ことではありません。

機械には、

必要な摩擦。

抑えた方がよい摩擦。

があります。

さらに潤滑状態は、

潤滑油だけ。

グリースだけ。

で決まるものでもありません。

表面状態。

素材。

荷重。

温度。

潤滑剤。

添加剤。

などが相互に関係します。

ネクストサイエンスのTechnologyページでも、摩擦そのものだけでなく、潤滑油、添加剤、表面状態、素材との相互作用まで含めて考えるという方針を示しています。

SPINと潤滑の考え方

ネクストサイエンスでは、摩擦・潤滑領域の製品としてSPINシリーズを展開しています。

SPINは、特殊なオイルと固体潤滑剤を組み合わせ、摺動部や回転部などの潤滑環境を整えることを目的としたシリーズです。

現在は用途に応じて、

No.1。

No.2。

グリース。

のタイプが用意されています。

ここでも重要なのは、

「どれが一番滑るか」

ではなく、

使用する箇所や条件に合わせて選択する

という考え方です。

また、SPINについては他の油脂との相溶性がないため、既存のオイルやグリースを完全に脱脂してから施工することが公式に案内されています。

脱脂が不十分な状態では損傷につながる可能性があるため、使用方法と注意事項を必ず確認する必要があります。

潤滑剤を選ぶときに確認したいポイント

潤滑油やグリースを選ぶときは、単に粘度や価格だけを見るのではなく、

何を潤滑するのか。

回転速度はどのくらいか。

どの程度の荷重がかかるか。

使用温度はどのくらいか。

水やほこりに触れるか。

潤滑剤を循環させる必要があるか。

漏れてはいけない場所か。

使用されている素材は何か。

既存の潤滑剤と混ざる可能性があるか。

メーカー指定は何か。

を確認することが重要です。

特に車両では、メーカー指定と異なる油脂を自己判断で使用すると、性能や耐久性だけでなく故障につながる可能性もあります。

まとめ オイルとグリースは「用途」で使い分ける

潤滑油とグリースは、どちらも摩擦や摩耗を適切に管理するための潤滑剤です。

潤滑油は液体で、

流動性が高い。

循環させやすい。

冷却しやすい。

高速回転へ対応しやすい。

という特徴があります。

一方グリースは、

ベースオイル。

増ちょう剤。

添加剤。

などから構成される半固体状の潤滑剤で、

その場所に保持しやすい。

漏れにくい。

潤滑構造を簡略化しやすい。

という特徴があります。

大切なのは、

オイルとグリースのどちらが優れているか

ではありません。

使用する場所に対して、

どちらが適切なのか

です。

さらにグリースでは、

硬さだけでなくベースオイルの粘度。

増ちょう剤。

添加剤。

温度。

回転速度。

荷重。

なども確認する必要があります。

潤滑は、

「とりあえず滑るものを塗る」

ことではありません。

動いている面と面の間で何が起きているのかを考え、必要な場所へ必要な潤滑状態を作ることが重要です。

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