ディーゼル車に乗っていると、
「軽油にも燃料添加剤は必要なのか?」
「ディーゼル用添加剤にはどんな種類がある?」
「セタン価を上げる添加剤とは?」
「冬に使う軽油添加剤は何が違う?」
と疑問に思うことがあります。
ディーゼル燃料添加剤とは、軽油に加えて特定の性能を補助するための製品です。
ただし、すべてのディーゼル燃料添加剤が同じ目的で作られているわけではありません。
インジェクターの清浄性を重視するもの。
着火性に着目するもの。
燃料系統の潤滑性を補助するもの。
低温時の流動性に対応するもの。
燃料の安定性や腐食対策を目的としたもの。
など、種類によって役割が異なります。
今回は、ディーゼル燃料添加剤とは何なのか、軽油用添加剤の主な種類や目的、選ぶ際の注意点について分かりやすく解説します。
そもそもディーゼルエンジンはどうやって燃える?
ガソリンエンジンとディーゼルエンジンでは、燃料への点火方法が異なります。
ガソリンエンジンでは、基本的にスパークプラグの火花を使って混合気へ点火します。
一方、ディーゼルエンジンでは空気を強く圧縮し、高温になった燃焼室へ軽油を噴射することで自己着火させます。
そのためディーゼル燃料では、
どれだけ適切に自己着火できるか。
燃料をどれだけ細かく噴射できるか。
低温でも適切に流れるか。
燃料ポンプやインジェクターに必要な潤滑性があるか。
といった性能が重要になります。
石油連盟も、軽油には適切な着火性、低温流動性、燃料噴射ポンプの摩耗防止に必要な粘度・潤滑性などが求められると説明しています。
ディーゼル燃料添加剤とは?
ディーゼル燃料添加剤とは、軽油へ少量添加し、特定の性能を補助・調整するための製品です。
ここで重要なのは、
「軽油にはもともと何も添加されていない」
わけではないということです。
市販されている軽油は、規格を満たすよう製造・調整されており、必要に応じて製造・流通段階で各種添加剤が使用されています。
ExxonMobilも、ディーゼル燃料には用途に応じてセタン価向上剤、潤滑性向上剤、低温流動性向上剤、腐食防止剤などが使用されることを説明しています。
つまり、市販の軽油に後から入れる添加剤は、
「軽油を正常な燃料にするために必ず必要」
というものではありません。
目的や使用環境に応じて追加で検討するもの、と考えるのが基本です。
種類1 清浄系添加剤
ディーゼルエンジンでは、インジェクターから非常に細かく燃料を噴射します。
特に現在のコモンレール式ディーゼルでは、高圧で燃料を噴射し、燃焼状態を細かく制御しています。
そのため、インジェクターの噴射状態は重要です。
清浄系添加剤は、インジェクターなどに蓄積するデポジットにアプローチし、燃料噴射系統の清浄性を維持することを目的としています。
ChevronやExxonMobilも、ディーゼル燃料用の洗浄・清浄系添加剤について、インジェクターデポジットの除去や付着防止を目的とするものとして説明しています。
燃料添加剤というと、
「馬力を上げるもの」
と考えがちですが、実際にはこうしたコンディション維持を目的とした製品も多くあります。
種類2 セタン価向上剤
ディーゼル燃料について調べると「セタン価」という言葉が出てきます。
セタン価は、ディーゼル燃料の自己着火性を表す指標です。
基本的には、数値が高いほど着火しやすい性質を示します。
ガソリンで使われる「オクタン価」と混同しやすいですが、意味は異なります。
ガソリンのオクタン価は、異常燃焼であるノッキングの起こりにくさを見る指標です。
一方、ディーゼル燃料では「圧縮された空気の中で、適切に自己着火できるか」が重要になります。
ENEOSも、軽油の自己着火性を表す指標としてセタン価を説明しており、数値が大きいほど自己着火しやすい燃料であるとしています。
セタン価向上剤は、この着火特性を調整することを目的とした添加剤です。
Chevronによると、一定範囲ではセタン価が高くなることで、寒冷時の始動性や燃焼騒音、始動時の白煙などに影響する場合があります。ただし効果の大きさはエンジンや燃料によって異なります。
セタン価は高ければ高いほどいい?
単純に、
「セタン価は高ければ高いほど性能が上がる」
と考えるのは適切ではありません。
車両は一定の燃料品質を前提として設計されています。
また、セタン価向上剤も添加量を増やせば比例して効果が増え続けるわけではありません。
Chevronの技術資料でも、代表的なセタン価向上剤では添加量を増やした際の効果が徐々に小さくなることが説明されています。
重要なのは、
必要な燃料品質を満たしていること。
そして車両に適した状態で燃焼することです。
種類3 潤滑性向上剤
ディーゼル燃料は、単に燃えるだけではありません。
燃料ポンプやインジェクターなどの燃料系統では、軽油そのものの潤滑性も重要になります。
特に高圧燃料ポンプでは、非常に精密な部品が高い圧力で動いています。
そのため軽油には、燃料系統を保護するために必要な潤滑性能が求められます。
石油連盟も、軽油の品質要求の一つとして、燃料噴射ポンプの摩耗防止に必要な適度な粘度と潤滑性を挙げています。
潤滑性向上剤は、こうした燃料系統の潤滑性能を補助することを目的としたものです。
ただし通常販売されている軽油は、必要な規格を満たして供給されています。
そのため、すべての車で後から潤滑性向上剤を追加する必要があるという意味ではありません。
種類4 低温流動性向上剤
冬のディーゼル車で特に重要なのが、軽油の低温特性です。
軽油を低温環境に置くと、成分中のワックス分が析出することがあります。
これが進むと、
燃料フィルターが詰まる。
燃料が流れにくくなる。
エンジンへ十分な燃料を送れなくなる。
最悪の場合、エンジンが停止する。
といったトラブルにつながる可能性があります。
日本では、この問題に対応するため、季節や地域によって低温性能の異なる軽油が販売されています。
石油連盟も、寒い時期に暖かい地域から寒冷地域へ移動する場合、現地で販売されている軽油を給油しないと、エンジン停止などのトラブルにつながる可能性があると案内しています。
低温流動性向上剤は、低温時にワックスが析出した際の流動性を改善することを目的とした添加剤です。
冬は軽油添加剤を入れれば安心?
ここには注意が必要です。
寒冷地へ行く場合、
「夏用の軽油に後から添加剤を入れれば全部解決する」
と考えるより、まず現地で季節・地域に適した軽油を給油することが基本です。
さらに、低温流動性向上剤は使う温度や濃度、燃料との相性などによって性能が変わります。
ExxonMobilは、後添加型の低温流動性向上剤が、すでに燃料へ配合されている添加剤とうまく作用しない場合があり、条件によってはフィルター詰まりなどを悪化させる可能性にも言及しています。
つまり、
「冬だからとりあえず何か入れる」
のではなく、
地域に適した軽油を使う。
必要な場合だけ対応製品を使う。
使用方法を守る。
という順序が重要です。
種類5 燃料安定性・腐食対策を目的とした添加剤
軽油は保管中にも、空気、温度、水分などの影響を受けます。
そのため、長期間燃料を保管する設備や、
農業機械。
建設機械。
非常用発電機。
船舶。
などでは、燃料の長期的なコンディションが問題になることがあります。
こうした用途では、
酸化安定性。
腐食。
水分。
燃料系統の汚れ。
などへの対応を目的とした添加剤が使われる場合があります。
Chevronは、ディーゼル燃料添加剤の用途を、エンジン・燃料供給系の性能、燃料取り扱い、燃料安定性、汚染物対策などに分類しています。
自動車だけでなく、長期間燃料を保管する機械では特に重要な考え方です。
ディーゼル添加剤はDPF装着車でも使える?
現在のディーゼル車には、DPFなど高度な排出ガス浄化装置が搭載されています。
さらに、
高圧コモンレール。
精密なインジェクター。
各種排気後処理装置。
なども組み合わされています。
そのため添加剤を選ぶ際には、
「ディーゼル用」
と書かれているだけで判断せず、その車両に使用できるかを確認することが重要です。
特にDPF装着車や最新のディーゼル車では、
車両メーカーの注意事項。
添加剤メーカーの適合情報。
使用濃度。
を確認してから使用する方が安心です。
明確に適合が確認できない場合は、販売店や製品メーカーへ確認してください。
ディーゼル添加剤は毎回入れる必要がある?
これは製品によって違います。
例えば、
一定距離ごとに使用する清浄系添加剤。
冬季など特定条件で使用する低温対策製品。
給油ごとに一定濃度で継続使用するタイプ。
などがあります。
したがって、
「ディーゼル添加剤は5,000kmごと」
あるいは、
「毎回必ず入れる」
と一律には決められません。
以前の記事「燃料添加剤は毎回入れる?」でも解説したように、
使用頻度は製品の目的で判断する
ことが重要です。
ディーゼル燃料添加剤の選び方
選ぶときには、次の5点を確認すると分かりやすくなります。
-
何を目的に使用するのか。清浄、着火性、低温性能、潤滑、燃料コンディションなど、目的を明確にする
-
軽油に正式対応しているかを確認する
-
DPFやコモンレールなど、自分の車両との適合を確認する
-
使用量と使用頻度を確認する
-
他の燃料添加剤と併用可能か確認する
最も避けたいのは、
「ディーゼル車に良さそうだから」
という理由だけで、目的の違う添加剤を次々に入れることです。
添加剤を多く入れれば効果も大きくなる?
基本的にはおすすめできません。
燃料添加剤には、製品ごとに適正濃度があります。
例えばセタン価向上剤であっても、添加量を増やせば同じ割合で効果が増え続けるわけではありません。
低温流動性向上剤も、燃料との組み合わせや使用条件が重要です。
複数の添加剤を無計画に組み合わせることにも注意が必要です。
Chevronも、ディーゼル燃料添加剤について、問題や目的を理解し、エンジンメーカーと添加剤メーカーの推奨に従って使用することが重要だとしています。
ディーゼル添加剤だけで故障は直せない
例えば、
エンジン警告灯が点灯する。
黒煙や白煙が急に増えた。
出力が大きく低下した。
アイドリングが不安定。
DPF警告が消えない。
燃料漏れがある。
始動できない。
といった症状がある場合には、添加剤を試す前に点検が必要です。
インジェクターや燃料ポンプの故障。
センサー異常。
EGRやDPFの問題。
圧縮不良。
など、機械的・電子的な原因は添加剤では修理できません。
燃料添加剤は整備の代用品ではなく、目的に応じて使用するコンディショニング手段の一つです。
ゲルホーンは軽油にも使える?
ネクストサイエンスのゲルホーンは、軽油にも対応しています。
現在の商品情報では、
ガソリン。
軽油。
灯油。
の3種類の燃料に対応しています。
ゲルホーンは、一般的なセタン価向上剤や低温流動性向上剤のように、軽油の一つの数値だけを調整することを目的とした製品ではありません。
ネクストサイエンスでは、
「燃料の状態を整え、燃焼を安定させる」
という燃料コンディショニングの考え方で位置づけています。
使用量の目安は、
燃料1Lに対して0.5ml
です。
例えば、
20Lなら10ml。
40Lなら20ml。
60Lなら30ml。
となります。
PEA系洗浄剤とゲルホーンは目的が違う
既存の記事「燃料添加剤とは?」でも解説している通り、燃料添加剤はすべて同じアプローチではありません。
代表的なPEA系洗浄添加剤は、
インジェクター。
燃焼室。
吸気バルブなど。
に付着した汚れへのアプローチを主な目的としています。
一方、ゲルホーンは燃料と燃焼状態に着目するという位置づけです。
したがって、
「どちらが上か」
という比較ではなく、
何を目的として使用するのか
で選ぶことが重要です。
ディーゼル車についても同じです。
軽油そのものの品質を理解することも重要
ディーゼル燃料添加剤について考えると、
どうしても添加剤だけに注目しがちです。
しかし、その前に重要なのが軽油そのものです。
日本で販売される軽油には、着火性、流動性、粘度、硫黄分などについて規格があります。
さらに低温性能については地域や季節に応じた軽油が供給されています。
つまり、
まず適切な軽油を使う。
車両を正しく整備する。
そのうえで必要な目的に応じて添加剤を検討する。
この順番が基本です。
まとめ ディーゼル燃料添加剤は「目的」で選ぶ
ディーゼル燃料添加剤には、さまざまな種類があります。
清浄系。
セタン価向上。
潤滑性向上。
低温流動性向上。
燃料安定性・腐食対策。
燃料コンディショニング。
それぞれ目的が違います。
だからこそ、
「ディーゼル添加剤なら何でも同じ」
ではありません。
まず、
何を改善・維持したいのか。
自分の車両に使用できるのか。
どのくらい入れるのか。
どのくらいの頻度で使用するのか。
を確認することが重要です。
そして、現在の軽油自体も一定の品質基準を満たして供給されています。
燃料添加剤は、正常な軽油や基本的なメンテナンスの代わりではありません。
適切な燃料を使い、車両を正しく維持する。
そのうえで必要な目的に合わせて添加剤を選ぶ。
この考え方が、ディーゼル燃料添加剤を正しく活用するための基本です。
