ST1000仕様で挑み続ける実戦タイヤ開発。雨とドライを走った2日間
2026年8月29日、30日、モビリティリゾートもてぎで、全日本ロードレース選手権 第5戦が開催されました。
ネクストサイエンスがレース活動をサポートする中冨伸一選手は、今回もJSB1000クラスに参戦しました。
私たちと中冨選手とのお付き合いが始まったのは、2015年のJSB1000オートポリスです。
そこから10年以上。
レースの現場を通して交流を重ね、現在も中冨選手の挑戦をサポートしています。
そして、中冨選手のJSB1000参戦を見るうえで知っていただきたいことがあります。
それは、単にJSB1000の順位を争うためだけに走っているわけではない、ということです。
中冨選手は以前から、ST1000用タイヤの開発に継続して取り組んでいます。
そのタイヤを実際のレース環境で評価するため、あえてST1000仕様のマシンでJSB1000クラスを走っています。
今回だけの取り組みでも、今シーズンだけの取り組みでもありません。
長く続けているタイヤ開発の一環として、実戦という厳しい環境をテストの場として活用しています。
今回のもてぎは、その意味でも非常に興味深い2日間となりました。
初日は雨。
翌日はドライ。
まったく異なる二つのコンディションを実戦の中で経験することになりました。
なぜST1000仕様でJSB1000を走るのか
JSB1000は国内ロードレースの最高峰クラスです。
当然ながら、JSB1000仕様のマシンとST1000仕様のマシンでは条件が異なります。
その中に、あえてST1000仕様のマシンを持ち込んで走る。
そこにはタイヤ開発という明確な目的があります。
テスト走行では、ある程度条件を整えて評価することができます。
一方、レースではそうはいきません。
前後には他のマシンがいます。
予定していたラインを走れないこともあります。
ブレーキングポイントも変わります。
アクセルを開けるタイミングも変わります。
さらに、路面温度、天候、グリップ、水量など、状況は刻々と変化します。
そうした中でタイヤがどう反応するのか。
ブレーキングでどう感じるのか。
旋回中の接地感はどうなのか。
立ち上がりでどのようにトラクションが伝わるのか。
そして、限界に近い状況でライダーが何を感じ取るのか。
実戦だからこそ得られる情報があります。
中冨選手は、その一つ一つをタイヤ開発へフィードバックするため、ST1000仕様のマシンでJSB1000を走り続けています。
順位だけでは見えてこない、もう一つのレースの目的です。
8月29日 レース1
水たまりの多い、厳しいウエットコンディション
8月29日は雨。
予選から決勝まで、ウエットコンディションでの走行となりました。
この日、特に難しかったのがコース上に多くできた水たまりです。
単純に路面全体が濡れているだけではありません。
場所によって水量が異なり、走行ライン上にも多くの水が残っていました。
こうした状況では、一周の中でもグリップの状態が大きく変化します。
タイヤから伝わってくる感触。
ブレーキング時の挙動。
旋回中の接地感。
アクセルを開けた際のリアタイヤの反応。
それらを常に確認しながら走る必要があります。
中冨選手も、マシンとタイヤの状態を確認しながらレースを進めていきました。
雨の決勝へ向けてピットアウトする中冨伸一選手の様子です。
しかし、レース終盤になると水たまりの多い路面はさらに走りにくい状況となりました。
そのため、終盤は無理にペースを維持せず、状況を見極めながらペースを落として走行。
15位でレースを終えました。
レースでは速さが求められます。
しかし、特に今回のようなウエットコンディションでは、「どこまで行くのか」「どこでリスクを抑えるのか」という判断も非常に重要です。
タイヤ開発という視点から見ても、これほど水量の多い実戦環境で得られるフィードバックは貴重です。
ドライ路面では分からないこと。
水たまりを通過したときの変化。
グリップが失われる直前の感覚。
そこからタイヤがどのように回復するのか。
こうした情報は、実際に走ったライダーだからこそ得られるものです。
8月30日 レース2
降雨を警戒しながら迎えた決勝
翌8月30日。
この日、私たちがレース直前まで気にしていたのが雨でした。
レース中に降雨がある可能性があり、天候の動きを確認しながら準備を進めていました。
雨になるのか。
ドライのままなのか。
レースでは、この違いが非常に大きな意味を持ちます。
ところがスタート直前、改めて雨雲レーダーを確認すると状況が変わっていました。
レース時間帯の降雨はないという情報に変化していたのです。
結果として、レース2はドライコンディションで行われました。
前日のウエットとはまったく違う条件です。
中冨選手は、今度はドライのレーススピードの中でST1000仕様のマシンとタイヤを走らせることになりました。
そしてレース2は11位でフィニッシュ。
初日の厳しいウエット。
翌日のドライ。
一つの大会で、まったく異なる二つの条件を実戦で走ることができました。
タイヤ開発という視点から考えても、非常に意味のある2日間だったと思います。
実戦でしか得られないタイヤ開発
タイヤ開発には、さまざまなテストが必要です。
条件を整え、一つずつ確認していくテスト走行も欠かすことはできません。
しかし、実戦には実戦でしか得られない情報があります。
他車と競り合う。
普段とは違うラインを通る。
予定より奥までブレーキングする。
アクセルを開けるタイミングが変わる。
路面が突然変化する。
今回のように雨が降り、水たまりができる。
そして翌日にはドライになる。
レースでは、予定していなかった状況が次々に起こります。
だからこそ、その環境の中でタイヤを使う意味があります。
「予想していた条件では問題なかった」だけではなく、「予想していなかった条件で何が起きたのか」を知ることが、次の開発につながります。
中冨選手が長年続けているST1000用タイヤの開発は、こうした実戦から得られる情報も積み重ねながら進められています。
そして、そのためにあえてST1000仕様のマシンでJSB1000という厳しい舞台を走っています。
中冨伸一選手とのお付き合いは2015年から
ネクストサイエンスと中冨伸一選手とのお付き合いが始まったのは、2015年のJSB1000オートポリスでした。
そこからレースの現場を通して関係を重ね、現在に至ります。
10年以上にわたり国内最高峰の舞台で走り続ける中冨選手。
さらに、そのレース活動と並行してタイヤ開発にも継続して取り組んでいます。
単にレースに出場するだけではなく、走る。感じる。確認する。そして次の開発へつなげる。
その繰り返しを続けています。
私たちネクストサイエンスも、そうした中冨選手の姿勢に共感し、現在のレース活動をサポートしています。
中冨選手とオービトロン
中冨選手との長いお付き合いの中では、オービトロンの開発ともさまざまな形で関わってきました。
過去には、中冨選手の名前を冠した「NAKATOMI」仕様のマイクロリアクターも製品化しています。
現在はラインアップ刷新に伴い販売を終了していますが、ネクストサイエンスと中冨選手との長い関係を象徴する製品の一つでもあります。
販売終了製品と新しいシリーズについては、こちらでご紹介しています。
ネクストサイエンスがオービトロンの開発で大切にしてきたのも、単に一つの数値だけを見ることではありません。
アクセル操作に対する反応。
車両全体の一体感。
滑らかさ。
タイヤの接地感。
そして、人が実際に操作したときに感じる違い。
そうした「走りの質」を長年追求してきました。
オービトロンの開発思想については、こちらの記事でもご紹介しています。
数値だけでは語れない「走りの質」を追求してきた10年以上の歩み
レースとオービトロンの製品開発は、それぞれ別のものです。
しかし、「実際に使って確かめる」「人が何を感じるのかを大切にする」「変化を次の開発へつなげる」という姿勢には、共通するものがあります。
現在のオービトロンは、新世代のMicro Reactor ZF、ZF-R Seriesへと進化しています。
ORBTRON Micro Reactor 新世代 ZF / ZF-R Series
もてぎの2日間を終えて
8月29日は、水たまりの多い厳しいウエットコンディション。
レース終盤にはさらに走りにくい状況となり、中冨選手はペースを落としながら15位で完走しました。
8月30日は、レース中の降雨を心配しながらの準備となりました。
しかし、スタート直前に確認した雨雲レーダーでは降雨なしの情報に変化。
レースはドライコンディションで行われ、中冨選手は11位でフィニッシュしました。
ウエットとドライ。
まったく異なる条件を、ST1000仕様のマシンで走った2日間でした。
そして、このもてぎでの走行も、中冨選手が以前から継続しているST1000用タイヤ開発の一部です。
あえてST1000仕様のマシンで国内最高峰のJSB1000を走る。
実戦の中でタイヤに負荷をかけ、その挙動を感じ取り、次の開発へフィードバックする。
一戦一戦の順位だけでは見えてこない、中冨選手のもう一つの挑戦があります。
2015年のJSB1000オートポリスから始まった中冨選手とのお付き合いは、現在も続いています。
ネクストサイエンスは、これからも中冨伸一選手のレース活動をサポートしてまいります。
中冨選手、RSNの皆さま、そしてレースを支えてくださった関係者の皆さま、2日間お疲れさまでした。
次戦での走りと、実戦を通じて続けられるタイヤ開発にも、ぜひご注目ください。
